全身照射(TBI:Total Body Irradiation)は、主に血液がんに対する造血幹細胞移植に先行して行われます。大量化学療法と併用されることが多く、「移植前処置」とも呼ばれています。この処置は、腫瘍細胞を可能な限り根絶させることや、移植した細胞への拒絶反応を抑える(免疫抑制)ことを目的としています。
TBIは優れた免疫抑制効果を持ち、抗がん剤が届きにくいとされる中枢神経や皮膚、生殖器などの部位に存在するがん細胞に対しても効果が期待できるため、移植前処置として重要な役割を担っています。
トモセラピーを用いることで、全身照射のプロセスにIMRT(強度変調放射線治療)の技術を応用できるようになりました。これにより、従来の全身照射(TBI)を進化させた、全骨髄照射(TMI)や全骨髄・リンパ節照射(TMLI)が可能となっています。
トモセラピーを使用する大きなメリットは、全身への必要な線量を維持しながら、水晶体、肺、腎臓といった放射線に弱い「リスク臓器」への曝露を精密に計算し、低減できる点にあります。
従来の照射法で必要だった肺防御用の鉛ブロックや補償フィルターを作成する必要がなく、装置の回転照射によって線量を細かくコントロールします。また、将来的な妊娠を希望される方(妊孕性温存)に対し、病状に応じて卵巣や子宮への線量を抑えた治療計画を検討できる場合もあります。
全身照射の手順は、医療機関によって多少異なるので、詳細については担当医へ確認しましょう。ここでは、具体的手順の概要を解説します。
全身照射は朝1回・午後1回の1日2回の照射を連続して3日間実施することがあります。副作用を予防するためにゆっくりと照射するので、1回におよそ1時間かかります。
照射方法は、仰臥位(あおむけ)となり左右から照射するケースと、側臥位(横向き)で前後から照射を行うこともあります。通常6回とも仰臥位で治療を実施しますが、がんの状態によっては3回仰臥位、3回側臥位で実施するケースもあります。
病状によっては副作用を抑える目的で、肺や目の前に鉛を置いた状態で放射線を防御することもあります。また、がんの種類によっては、全身照射前の週に、脾臓へ放射線照射を実施することもあります。再生不良性貧血では、原則として全リンパ節への照射を1回で行っています。
具体的手順については、以下をご覧ください。
放射線治療や副作用防御方法の進歩に伴い、副作用は軽度になりつつあります。また、副作用の症状や程度には個人差が生じやすいため、心配な症状については担当医に確認してください。ここでは、見られる可能性のある副作用について解説します。
口の渇きや涙の減少、嘔気・嘔吐、下痢、脱毛、肝障害、耳下腺炎(耳の下の一過性の疼痛・腫脹)などが出現することがあります。
白内障や間質性肺炎、成長遅延、ホルモン障害、性腺障害、腎障害、二次発がんなどが生じる可能性もあります。
トモセラピーを用いた全身照射は、IMRT技術を活用することで、標的となる骨髄などへ十分な照射を行いながら、肺や腎臓といった重要臓器の負担を抑えることが可能です。特に若い患者さんの妊孕性温存など、QOL(生活の質)を重視した治療計画を立てられる点が大きな特徴です。
※実際の治療適応については、患者さんの病態や施設の設備状況により異なります。必ず専門医による診察と診断を受けてください。
以下のページでは、トモセラピーの基礎知識について解説していますので、治療を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
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