当記事では、トモセラピーと陽子線治療にはどのような違いがあるのかまとめ、それぞれの治療法のメリットについても解説しています。ぜひ参考にしてください。
トモセラピーは、がん病巣の形状に合わせて正確な放射線照射を行うことができる治療機器です。強度変調放射線治療(IMRT)と呼ばれる技術を用いて、コンピュータ制御により放射線の形状や強度を細かく変化させながら、360度さまざまな方向から照射します。
このような照射方法により、がん病巣に多くの放射線を集中させつつ、周囲の正常な組織への被ばくをなるべく減らすことが可能な治療法です。
陽子線は、体内のある深さのところで線量のピーク(ブラッグピーク)を迎え、そこで止まるという物理的な性質を持っています。この止まる位置は、陽子線のエネルギーを変化させることで調整できるのが特徴です。
このピークとがん病巣の位置を正確に一致させることで、がんの奥にある正常な組織には放射線が当たらないようにすることができます。
がんに集中的に放射線を照射し、正常組織へのダメージを最小限に抑えることで、副作用のリスクを軽減するように調整が行えます。
この2つの治療法は、がん細胞に対する生物学的な効果や、病巣そのものへ高い線量を集中させるという点では大きな違いはありません。しかし、正常組織への線量分布(放射線の広がり方)には違いがあります。
トモセラピーは360度から照射を行うため、周囲の正常組織に低線量域(弱い放射線があたる部分)が広がります。一方、陽子線は腫瘍の奥に放射線が抜けないため、この低線量域を少なく抑えることができます。そのため、肝臓がんや下肺野(肺の下部)の大きな肺がんの治療などには、陽子線治療のほうが有利なケースがあります。
一方で、トモセラピーは照射範囲を広く設定できるため、複数の部位に転移したがんや、縦方向(頭尾側方向)に広がったがんの治療であっても1度に行うことができます。対して、陽子線治療は局所に留まっているがんの治療に向いているのが特徴です。
トモセラピーの方が陽子線よりも得意とされる部位・状態には、進行性前立腺がん、進行性の喉頭・咽頭がん、進行性食道がん、多発性骨転移、多発性リンパ節転移などがあります。
一方、陽子線の方がトモセラピーより向いているとされるがんには、大きな肺がんや肝臓がん、下葉の肺がん、呼吸機能が低下している肺がんなどが挙げられます。
また、どちらの治療法も有効性が期待できるものとして、限局性の前立腺がん、喉頭がん、小型肺がん、食道がんのほか、単発のリンパ節転移や骨転移、脳転移などがあります。

トモセラピーと陽子線治療は、がん細胞への効果や、病巣へ放射線を集中させる技術という点では共通していますが、線量分布の特性や得意とする領域が異なります。トモセラピーは多発転移や広範囲の治療を1度に行える柔軟性があり、陽子線治療は正常組織への被ばくを極力抑えたい局所がんの治療に強みを持ちます。
以下のページでは、トモセラピーに関する基礎知識をご紹介しています。トモセラピーによる治療を検討中の方は、ぜひ参考にしてみてください。
【注意事項】
本記事で紹介している治療法の適応や効果は、患者さんの全身状態、がんの進行度、合併症の有無などによって異なります。実際の治療方針の決定については、自己判断せず、必ず主治医や放射線治療の専門医にご相談ください。
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