トモセラピーは、肛門がんや直腸がんに使用されます。ただし、一般に根治を目指した治療はがんが発生した臓器やその周囲のリンパ節にとどまっている場合に行います。肺や肝臓に病気が多く転移している場合や、播種(はしゅ)をしている場合は、根治を目的とした放射線治療の適応にはなりません。トモセラピーが使用できるかは、担当医とよく相談の上決定することになります。
肛門がんは、希少がんといわれる発生頻度が少ないがんの1つです。全悪性腫瘍の0.1%程度と言われています。肛門にできるがんであり、日本では腺がんという種類のがんが多く、欧米では逆に扁平がんという種類が多く発生します。
多くの場合50歳以上の年齢で罹患することが多いです。
肛門がんは、肛門周辺の症状で気がつくことが多いようです。排便時の痛みや出血、そしてかゆみがあることもあります。見た目には肛門管内型・管外型・肛門縁型の3種類がありますが、症状はほぼ同じと考えられていて、直腸や肛門からの出血・肛門部の痛み・何度もかゆみが起きる状態・肛門より膿や粘膜が分泌されたり肛門や鼠経部にあるリンパ節が腫れたりするといった症状があります。肛門がんの多くは痔と間違えられることも多いです。
一般的には痔の場合には鮮血で出血することが多いですが、肛門がんの場合には、赤黒い血液が分泌物とともに出るという傾向があります。また、痛みも痔の場合には短期間、肛門がんでは長期間継続するなどの特徴もあります。しかし、いずれも個人差がありますので、出血や痛みなど長期間継続するときには、病院を受診してください。
現在、肛門がんの原因として、はっきりとわかっている機序はありません。しかし、危険因子はいくつか判明しています。近年の知見では子宮頸がんと同様にヒトパピローマウイルスが関与しているとも考えられいます。そのほかの危険因子は次のようなものです。コンジローマと呼ばれる肛門のいぼがある・臓器移植・免疫反応を下げる薬を服用している人・肛門性交をしている人・慢性の切れ痔がある人・直腸や前立腺、膀胱といった周辺のがんへの放射線療法を受けたことのある人などとなっています。
肛門がんでは前述の通り、トモセラピーの対象となる場合があります。多くの場合、抗がん剤治療と放射線治療を組み合わせた化学放射線療法が世界的な標準治療となっており、外科的切除と同程度の効果と考えられています。
治療方針を決めるときには、よく担当医と話し合いさまざまな治療選択肢を考え合わせて決定することをおすすめします。
がんの方の生活の質を高めるための「緩和ケア」について紹介しているサイトです。主治医に「治療がない」と言われた方でも受けられる可能性がある治療についてもまとめています。