がんの放射線治療において、「トモセラピー」や「リニアック」といった装置の名前を耳にし、どちらで治療を受けるべきか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
結論から言うと、この2つは全く別の技術というわけではありません。「リニアック」は放射線治療のベースとなる一般的な装置(汎用機)であり、「トモセラピー」はそのリニアックを小型化して特殊な治療に特化させた専用装置という関係性になります。
当記事では、それぞれの装置の仕組みや特徴を整理し、患者さんの病状に合わせた「違いと使い分け」について解説します。
リニアック(直線加速器)とは、放射線(X線や電子線)を人工的に作り出し、がん病巣に向けて照射する装置の総称です。現在、日本のみならず世界中の多くの病院で導入されている、標準的で汎用性の高い放射線治療装置です。
大きな特徴は、一般的な放射線治療から、高精度な治療まで幅広く対応できる「柔軟性」にあります。
近年導入されている最新型のリニアックでは、がんの形に合わせて放射線の強さを調整するIMRT(強度変調放射線治療)や、数mmから数cmの小さながんに対して多方向からピンポイントで大線量を当てる定位放射線治療(SRT/SRS)なども可能になっています。
参照元:済生会熊本病院公式サイト(https://sk-kumamoto.jp/sk_times/6774/)
トモセラピーは、アメリカで開発された「IMRT(強度変調放射線治療)」を行うための専用装置です。
見た目は画像診断で使うドーナツ型の「CT装置」にそっくりですが、リングの内部に「小型に改良されたリニアック」が組み込まれており、CT撮影と放射線治療を1台で同時に行えるハイブリッドシステムとなっています。
大きな特徴は、患者さんが寝台に横たわってリングの中をゆっくりと移動する間、装置が360度らせん状に連続回転しながら、細い放射線ビームをあらゆる角度から照射できる点です。
治療の直前に内蔵CTでがんの位置を正確に把握し、正常な組織への被ばくを可能な限り避けながら、「複数箇所に散らばったがん」や「いびつで複雑な形状をした腫瘍」に対しても、ピンポイントで集中照射できるのがトモセラピーの強みです。
参照元:大津赤十字病院公式サイト(https://www.otsu.jrc.or.jp/about/medical-equipment/tomotherapy/)
どちらも「放射線でがんを治療する」という目的は同じですが、装置の構造と得意分野に違いがあります。
リニアックは「さまざまな照射方法に対応できる万能型の放射線治療装置」であり、トモセラピーは「リニアックを内蔵し、複雑ながんへの高精度な照射(IMRT)に特化した専用装置」です。
どちらの装置が優れているかではなく、「がんの大きさ、形、場所、転移の有無」によって、どちらの装置を使うのが適しているかが重要です。
どちらの治療法も、正常な組織への被ばくを抑えつつ患者さんの体への負担を軽減できる技術です。ご自身の病状にはどういった治療が適しているのか、まずは主治医や放射線治療の専門医へしっかりと相談し、納得のいく治療方針を決定しましょう。
以下のページでは、トモセラピーに関する基礎知識を解説していますので、あわせてご覧ください。
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