放射線治療には、体の外側から放射線をあてる「外部照射」と、体の内側から放射線をあてる「内部照射」があり、両者を組み合わせて治療を行う場合もあります。患者さんの状況に応じた適切な治療法は担当医や放射線腫瘍医が判断しますが、こちらの記事では、数ある放射線治療におけるトモセラピーの位置づけについてご紹介します。
身体の外側からがん病巣へ向かって、さまざまな角度より放射線を照射する治療法を指します。この照射法は身体にかかる負担が比較的少ないことから、多くの場合で入院を必要とせず、外来へ通院して治療を行うケースが一般的です。現在、放射線治療の約9割がこの外部照射によって実施されています。使用する放射線や装置、方法などによっていくつかの種類がありますが、高エネルギーのX線を用いた照射法が多く採用されています。
参照元:一般社団法人日本ガンマナイフ学会公式HP(http://www.gamma-knife.jp/radiotherapy/index.html)
病変部を含めたある程度広い部位へ、放射線の線量を何回かに分割して照射する治療法です。患者さんの状態によって異なりますが、一般的に3~8週間ほどの期間をかけて治療を行います。
正常組織は、がん細胞と比べてダメージから回復するスピードが速いため、放射線照射後に正常組織が回復するタイミングを待ちながら分割して照射を実施します。この照射法は、乳がん手術後に再発予防のために行われるほか、痛みの緩和を目的として取り入れられることもあります。
通常の放射線療法では効果が得にくいとされる症例に対し、手術の際に患部を直接露出させ、一度に多めの放射線を照射する治療法のことです。切除手術を実施した後に、がんが残存している可能性のある部位へ直接放射線をあてる治療法を指すこともあります。
がん病巣を直接目で確認した後に、その部位へ放射線を照射できるのがメリットです。放射線に弱い性質を持つ重要臓器や、病巣周囲の正常組織へあたらないようコントロールしやすいという特徴があります。
狙いを定めたがん病巣に対し、多方向から集中的かつ正確な位置精度を維持しながら実施する精密な外部照射のことを言います。この治療のメリットは、高い局所制御効果と精度の高さが期待できる点にあります。
従来の治療法と比べてがん病巣へピンポイントに照射できるため、より高い治療効果が期待されています。
放射線を出す物質(放射線源)を身体の中へ入れて、直接がん病巣へアプローチする放射線治療法を指します。この治療法には、密封小線源治療と非密封小線源治療があるのが特徴です。外部照射と比較すると、がん病巣のすぐ周囲から放射線を照射できるほか、呼吸や生理的な運動によってがん病巣の位置が変わる影響を受けにくいという利点があげられます。
高エネルギーのX線や電子線を用いて、身体の中にあるがん病巣の安全かつ効果的な治療を目指します。X線治療では、数回に分けながらがん細胞へ少しずつダメージを与え、死滅を促していきます。
三次元原体照射とは、はじめにCTやMRI、PETといった画像と専用コンピューターを用いて、がん病巣の部位や大きさ、形状などを特定し、がんや周囲の組織を立体的に再現します。そのうえで、治療装置を回転させながら、がん病巣の大きさや形状に合わせて正確に放射線を照射していきます。
この照射法は、正常組織への影響をなるべく軽減できるよう工夫されており、多くの医療機関で用いられています。
がん病巣の形状に合わせながら、より精度の高い放射線照射を行うことが可能です。コンピュータ制御により、放射線の強度や形状を複雑に変化させることができ、360度さまざまな方向から照射できます。このような照射法により、放射線をがん病巣に集中させつつ、周囲の正常組織にはなるべく当たらないよう調整できる点がメリットです。
装置の中に内蔵されているCTを用いて、毎回の治療直前に画像撮影を行います。この画像を使用して、がん病巣やその周囲の正常組織の位置を確認し、あらかじめ計画通りになるように身体の位置を微調整していきます。このように、事前に位置を確認して微調整を行っておくことで、より正確な放射線治療が可能となります。
●トモセラピートモセラピーは、強度変調放射線治療(IMRT)と画像誘導放射線治療(IGRT)という二つの技術を組み合わせた放射線治療装置です。この装置を用いた治療法は、比較的副作用を軽減しやすいため、年齢や体力などの面から、手術療法や抗がん剤治療が困難なケースでも適応となることがあります。
また、一度に数か所に対して照射することが可能なため、患者さんの通院の負担を軽減しやすい治療法でもあります。身体にかかる負担を抑えやすい治療ではありますが、状態によっては適応とならないこともあります。現在の状態を考慮し、主治医へ適応となるか確認してみるのが望ましいです。
厳重な精度管理のもと、がん病巣へ集中的に一度に高線量の放射線をあてる技術のことです。がん病巣の大きさや広がりが限局的なケースでは、手術の代わりに採用される治療でもあります。脳転移や肝転移、肺転移、骨転移といったさまざまな部位の転移性腫瘍や、早期肺がん、膵臓がん、前立腺がんなど幅広く用いられているのが特徴です。
●リニアックリニアックは、一般的な照射から強度変調放射線治療、定位放射線治療まで1台でカバーできる装置です。さまざまな疾患に対応可能な高エネルギー放射線治療装置でもあります。治療の際は、多方向からピンポイントで放射線を当てることにより、正常組織への放射線の照射量を低減しつつ、腫瘍部分の放射線量が高くなるよう調整します。この装置では、がん治療に必要な高エネルギーのX線や電子線を発生させるのが特徴です。
治療対象疾患については、以下をご覧ください。
対象となる疾患は、非常に幅広いのが特徴です。
●サイバーナイフ小型のリニアックを搭載し、定位照射に特化しているとされる装置も普及しています。その1つがサイバーナイフです。この治療法は、超小型リニアックを産業用ロボットに取り付けたシステムのことを言います。
2方向のX線透視撮影を用いて、患者さんの動きをモニターしつつ、産業用ロボットの特性を活かしながらさまざまな方向よりピンポイント照射することが可能です。
画像解析技術や巡航ミサイルにも使われる照合技術を応用した「病変追尾システム」により、がん病巣に狙いを定めます。呼吸などでがん病巣が動いた場合でも、その動きを追って正確な照射を目指せる特有のシステムを備えています。
周囲にある正常な組織へのダメージをなるべく抑えつつ、およそ200個の線源より発生するガンマ線(γ線)を活用して、虫眼鏡の焦点のように腫瘍に対して集中的に照射する治療です。
ガンマナイフとは、1968年にスウェーデンの脳神経外科医により開発された放射線治療装置のことです。1本ずつのガンマ線は細いビームのため、周囲の正常組織には影響が出にくく、ビームが集中する箇所だけ、まるでナイフで切り取ったかのようにピンポイントで治療できることから名づけられました。
開頭手術を実施しなくても、脳内の小さな病変にアプローチ可能な、身体的負担の少ない治療法です。放射線を一点に集めて治療する原理により、開頭の必要なく脳腫瘍や脳動静脈奇形といった疾患の治療が行えます。
粒子線は、X線とは異なり、体内をある程度進んだ後に急激に高いエネルギーを周囲へ放出し、その後消滅する性質を備えています。その性質を用いると、がん病巣部の周囲にのみ高いエネルギーを与えやすく、通り道となる正常組織への影響を抑えるようコントロールできます。
X線治療と比べると、がん病巣部に対してより高い放射線量を照射しやすいため、より高い治療効果が期待できるとされている治療法です。
陽子線治療は、水素の原子核である陽子を加速器にて加速させることにより、ビーム状にして体内へ照射させます。X線と比較すると物理的な性質が異なり、体内にあるがん病巣に対してエネルギーを集中させやすいのが特徴です。
したがって、身体への影響を抑えながらも、効果的な治療が期待できる方法となっています。
この治療法は、炭素イオンを用いた重粒子による放射線ビームをがん病巣に向けて照射する治療のことです。がんの三大治療は手術療法、薬物治療、放射線治療の3つですが、重粒子線治療は放射線治療の技法の1つとして位置付けられています。
X線と比較するとターゲットとするがん病巣を集中的に照射しやすいことが大きな特徴です。
がん細胞を選択的に破壊することが期待できる治療の1つに挙げられる方法です。BNCT(ホウ素中性子捕捉療法)とは放射線治療の一種であり、ホウ素と中性子がぶつかることによって生じる核反応を用いた治療です。正常組織へのダメージをなるべく抑えながらも、がん細胞へピンポイントにアプローチできるのがメリットに挙げられます。
密封小線源治療は、体内のがん病巣やその周辺に直接放射線を出す物質を入れて、体内から放射線を当てる治療法を指します。この治療法は、前立腺がんに対して行われる治療の1つでもあります。
γ線やX線などの放射線を放出する、小線源というチタン製カプセルに密封された放射性同位元素ヨウ素125を前立腺内に永久的に留置します。そのうえで、内側から放射線をがん病巣に向けて直接照射していきます。
体内の組織に向けて線源を挿入し、直接がん病巣へ放射線を照射する方法です。組織内へ線源を挿入する際には、麻酔を使用します。この治療法が適応となる主な疾患は、乳がんや舌がん、前立腺がんなどです。
照射には高線量率で行う方法と低線量率で行う方法があり、線源の挿入も一時的なものと永久的なものに分かれます。なお、永久的に挿入するケースでは低線量率の線源を用います。
気管や子宮といった管状もしくは袋状になっている臓器に線源を挿入し、がん病巣の至近距離から放射線を照射する治療法のことです。この治療法が適応となるのは、気管支がんや子宮頸がんなどです。
照射する方法には、高線量率で行う方法と低線量率で行う方法があります。線源は一時的に挿入されるのみとなっているため、治療が終われば患者さんの体内には残りません。周囲の組織への影響も少ないため、通院での治療が可能になるケースもあります。
がん細胞に取り込まれる性質を持つ放射性同位元素と呼ばれる物質を用いて、がんへ直接照射する治療のことです。保険適用の可能性があるとされている主な疾患は、以下の通りです。
代表的な治療として、甲状腺がんに対する放射性ヨウ素(ヨード)内用療法があります。甲状腺は、海藻などの食べ物に含まれるヨウ素を取り込むことにより、甲状腺ホルモンを生成している臓器です。甲状腺がんの中には、正常な細胞と同様にヨウ素を取り込むタイプのものがあります。
このようなケースでは、放射性ヨウ素のカプセルを内服するとがん細胞に薬物が取り込まれ、そこから放出される放射線によって、がん細胞のみへ選択的にアプローチする治療が可能です。
トモセラピーは、CTのように患者さんの周囲をまわりながら、細い放射線のビームを組み合わせることにより行う治療です。照射したい部位に沿った線量分布を描きつつも、正常組織など避けたい部位への放射線をなるべく軽減できるのが特徴です。強度変調放射線治療とも呼ばれるトモセラピーは、従来の放射線治療法と比べると正常な臓器へのダメージを低減しやすく、より身体に優しい治療が目指せます。
また、毎回の治療の前に位置合わせのための画像を撮影し、場所のずれを修正します。このように、位置合わせの精度の高さに優れている点もトモセラピーの大きなメリットです。
放射線治療には、X線治療やγ(ガンマ)線治療、粒子線治療(陽子線・重粒子線)などさまざまな種類があります。
放射線治療と一口にいってもそのアプローチは多岐にわたり、がんの種類や個々の病状、検査データによって勧められる治療は異なります。「どの治療法がいいのか迷う」「主治医から勧められた治療法以外にも選択肢はないか」と考えられている方は、セカンドオピニオンを受けるほか、ご自身やご家族と一緒に正しい知識を身につけていくことが大切です。
ご自身にあったがん治療を選択していけるように、疾患や治療法についての理解を少しずつ深めていきましょう。
がんの方の生活の質を高めるための「緩和ケア」について紹介しているサイトです。主治医に「治療がない」と言われた方でも受けられる可能性がある治療についてもまとめています。